ママの話 ①
「やりなさい」「やめなさい」
ママはよくこの言葉を使う。
「するな」
と言う時もあった。
社会人になった今でも言われることがある。
昔からよくその言葉を言われ、そして私は言われるままその通り動いた。
ママが言ってることは正しい、だからママの言うことを聞かないいけない。
いい子にならなければ。
じゃないと怒られる。
だから私は「わかった」と言うしかなかった。
他に選択肢が無かった。
そんなことを繰り返していたら私は指示が無くては動けない、どうしたらいいか分からない人間になった。
あれほど「しなさい」「やめなさい」と言ってきたのに、私が中学生や高校生になって進路を決めるとき「自分のことは自分で決めなさい」と急に突き放したりする。
この時も「しなさい」だったね。
私が後で大変な思いをしないようにだとか、やっておいて良かったやめておいて良かったと思えるようにだとかそういった私のためを思って全部言ってるんだろうけど。
生きづらくてたまらなかった。
いい子になる為にはこんな小さなことまで言いなりにならなければいけないのかと何度も思った。
成長するにつれ、指示が無ければ何も動けない自分が嫌でたまらなかった。
ママがなんでも言うことを聞かないと怒るから私が結果こういう人間になってしまったんだと怒りすら覚えた。
自分で決めることを教えてくれなかったのに突然「自分で決めなさい」というママが怖かった。
決めれないと泣いたら怒るのだろうか、それとも呆れるのだろうかと。
私のママは私をいい子だと思ってはいない。
それが何よりも悲しいのに、ママはそれに気づかない。
「他と一緒じゃつまらない」と言うくせに都合が悪くなると「他の子は誰もやっていない」と言うことも私、文句言ったことないよ。
「やりなさい」と言われたらやったよ。
「やめなさい」と言われたらやめたよ。
だから少しくらい私だって怒ったって良いじゃない。
怒りながらでも言うことは聞いてるんだから。
なのにどうしていつもそれに対してママも怒るの。
ママは怒りながら命令したりするのに私が怒るのはダメなの?
怒りながらではいい子になれない?
どれだけ嫌でもニコニコしながら「わかった」と言えない限り私はいい子になれない?
そんなことを今でも私はママに聞けずにいる。
私ね、ママの育て方にはとても不満があるけれど、それでもママなりに大事に育ててくれてるのも分かっているから、嫌いになれないんだよ、好きなんだよ。
私、いつになったらママにとっていい子でいられるのかな。
もういい子にはなれないのかな。
ねえ、私、ママのこと、好きだよ。
でもね、ママのせいで私、自分の子どもがほしいとは思えなくなっちゃった。